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熟読して実践することによりお母さん方も現役の医師のような判断と対応が可能になります。 |
急ぐ時は チェックポイント→プラクティス でOK !
チェックポイント 発熱で下記の項目に該当する時は、検査・入院治療の必要があります。注意深く観察してひとつでも あてはまる時は医療機関を受診して下さい。
1 生後1ヶ月前後の発熱・生後6ヶ月前後までの発熱、あるいは4日以上続く発熱。 *注 生後1ヶ月前後の発熱は異常事態です。必ず受診してください。 *注 髄膜炎・脳炎さえ否定できれば翌日の受診でも十分対応(肺炎・腎盂炎・中耳炎等の疾患)できます。 *注 髄膜炎の見分け方・髄膜炎を否定する上での参考→fever 2 突然の40゜C以上の発熱。 *注 必ずしもすべてが重症で緊急を要するというわけではありません。まれに髄膜炎の初期のことがあるため受診して下さい。 *注 髄膜炎・脳炎が否定できれば翌日の受診で構いません。 3 髄膜刺激症状がある時。 高熱と同時に頭痛や吐き気・おう吐、うとうとして普段の様子と違う感じ、聞きなれない甲高い泣き声、 項部(うなじ)が固く痛がる、ぐったりして 元気がないなどの症状がみられます。 *注 この段階ではすでに髄膜炎が発症していると考えられます。 4 意識障害がある。→意識障害の簡単な見分け方は「けいれん」の項に記載。 いつもとくらべて焦点が定まらない状態、うとうとして反応が悪い、奇異な感じの泣き声、背中をそらせたようなおかしな姿勢をみとめます。 *注 脳炎・脳症の可能性が濃厚。 *注 脳炎・脳症は発症の仕方に2通りあります。 ①高熱→痙攣→意識障害、 ②発熱→何となく様子がおかしい→意識障害。 5 呼吸困難を伴う。 息が荒く呼吸回数が多い、呼吸のたびに肋間や前頸部のノドぼとけの下がくぼむ、ぜいぜい、ヒュ- ヒュ-する、顔色・唇が蒼白な感じ、 苦しくて話せない等の症状をみとめます。 *注 重症の喘息発作・クル-プ・肺炎・誤飲等が想定されます。顔色・口唇が蒼くみえる時は躊躇なく病院へ。 6 脱水症状がある。 水分がとれず尿の回数が少ない、口内が乾いて唾液が少ない、おなかの皮膚がしわしわになっている等の所見がみられます。 *注 脱水があっても、元気さが普段と比べてそれほど変らない状態であれば、水分等の補給で様子を見ることができます。
アドバイス
発熱が続いたり高熱だと脳炎になるのではないか、すぐに解熱しないと悪い病気を考えて不安になります。次のことに 留意すれば冷静な対応が可能になります。
1 チェックポイント(1-6)に該当しなければ夜間家庭内でとりあえず対応、翌日になってからの受診で問題ありません。 1-6に該当しても髄膜炎・脳炎、重症の喘息発作・重症のクル-プ(口唇が蒼白に見える)などが否定できれば昼間の外来まで待 つことが可能。 2 チェックポイントに該当しないときは、あわてて何かするということは必要ありません。 (熱性けいれんをおこしやすい場合は別途解説を参考) 3 発熱の程度は必ずしも重症度を反映していません。 (ただし突然の40゜C以上はごくまれに髄膜炎の初期が紛れ込んでいるので要注意) 4 発熱の原因を診断することが大切です。 5 こどもの発熱の90%はウイルスの感染症です。ウイルスの感染症は免疫ができれば自然に解熱してゆきますので、熱発の大部分は安静等の対症療法で 十分です。細菌感染の場合は抗生物質が有効です。 6 解熱剤の効果は一時的です。直接ウイルスや細菌感染を治療しているわけではありません。
プラクティスチェックポイント 1-6 に該当する時は夜間でも受診が必要です。発熱だけで普段と変わりなく余裕のある時は下記の如く家庭内での対応が可能、その後も解熱しない時は通常の外来を受診して下さい。
メモ 1 ウイルス感染症には抗生物質は無効、こどもの発熱の9割はウイルス感染が原因で抗生物質が不要と考えています。 2 生後1ヶ月前後の発熱は尿路感染症、肺炎、髄膜炎の可能性が高く、受診時検査が必要になります。 3 10ヶ月前後のはじめての発熱は特発性発疹、RS感染症の可能性があります。 4 4日以上続く発熱、あるいは昼間は平熱で夕方から夜になると発熱する場合、肺炎腎盂炎等の細菌感染症を疑います。 5 5日以上つづく発熱では細菌感染症のほか川崎病、ある種のウイルス感染症(アデノ、エコ-ウイルス、EBウイルス等)が考えられます。 6 突然の40゜C以上の発熱で元気がなくぐったりした感じのときは肺炎球菌による肺炎、髄膜炎・脳炎、菌血症のことがあります。 7 菌血症は血液に細菌が入った状態で、高熱が続きあきらかな感染臓器が不明なとき、想定される疾患です。 * 赤字は高熱時、医師が想定もしくは警戒している疾患です。髄膜炎・脳炎 はその場で見逃してはならない疾患になります。 8 発熱時、診察のみでは診断が確定できないとき、次のような検査を実施すると重症感染症の早期発見に有効です。
(いずれも当診療所で実施可能、15分から20分で結果が判明します。)
[参考]
こどもの正常体温と発熱の種類
*平熱には個人差がありますが、便宜的には新生児38.0゜C 以上乳児37.5゜C以上幼児・学童37゜C以上を発熱と考えます。
インフルエンザ脳症の見分け方と初期対応
インフルエンザ罹患時の注意すべき症状 このような症状があるときは次のような合併症があるので、すぐに医療機関(入院可能な病院)を受診すること。 A 脳炎・脳症 B 肺炎 C 心筋炎・心筋症 D 脱水症
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チェックポイント こどものけいれんでそのまま死につながることはまずありません。熱性けいれんとてんかんなどの他の原因によるけいれんを 冷静に見極めることが大切です。熱性けいれんは必ず熱発しています。下記の事項を参考に確認して下さい。
1 発熱の有無,38.5゜C以上かどうか必ず確認すること。 2 けいれんの続いている時間、10分以内もしくは10分以上かを把握する。 3 けいれんの状態を観察。 眼球の様子、両手両足の情況(手足をガクガクさせている、もしくはかたくつっぱているかどうか)。 4 けいれん回復後の意識の状態。 けいれんがおさまった後いつもと同じような感じか、いつもとくらべて視線が合わなかったり、別の雰囲気になっていな いか 注意する。 * 上記はいずれもそのけいれんが熱性けいれんかてんかん、もしくは脳炎などによるものか、見分けるのに極めて重要な情報になります。 "あわてる前に観察"が何より大切です。 * けいれん発作時は意識がなくなります。高熱時意識があって口唇をガクガクor小刻みに震わせている状態は悪寒戦慄or振戦の状態でけいれんでは ありません。この場合、発熱時の対応で改善します。 アドバイス熱性けいれんであれば、次の項目を参考に再度けいれん発作がおきてもあわてて救急車にたよらないようにしたいものです。 熱性けいれん以外のけいれん、時間が15分以上のけいれん、けいれん消失後意識状態がおかしい様な状態の場合は原則入院 になります。
1 熱性けいれん(単純性)の発作が5分以上続くことは少なく、重篤な結果になることはありません。直ちに受診する必要はなく翌日の受診で十分です。 2 1回の発作が5分以上続いたり、短時間にけいれん発作を繰り返す時は入院、検査等を考慮して直ちに受診して下さい。 3 .熱がないのにけいれん(無熱性けいれん)を起こした時はてんかん・低血糖・脳形成異常・脳血管障害等の可能性があり、直ちに受診して下さい。 4 けいれんが短時間におさまり、1回のみで終わった時は、安静・熱のコントロ-ルにつとめ、翌日受診することで十分です。 5 髄膜炎、脳炎によるけいれんはけいれん消失後も意識状態が普段と異なっているので見分けることが可能です。
*発熱時の悪寒・戦慄(手足の小刻みなふるえ)はけいれんとまぎらわしい。この時は 意識がはっきりとしていることが鑑別のポイントです。 プラクティスチェックポイントを参考に熱性けいれんと判断できれば次の対応で問題はありません。
メモ 1 熱性けいれんは発熱後24時間以内に起きることが大部分で、けいれん発作も1回のみのことが多い。 したがって抗痙攣剤等の予防的な使用は2回目の熱性けいれんを起こした場合に考慮します。 2 脳炎・髄膜炎に伴うけいれんは、けいれん前後の意識状態が普段とは何となくor明らかにちがうので家族であれば気づきます。 3 両親・兄弟等に熱性けいれんの既往がある場合は、熱性けいれんを起こす確立が高くなります。 4 5~6歳以上になってから熱性けいれんを起こすことは少なく、その場合はてんかんもしくは他の疾患によるけいれんを考えます。 5 けいれんの後、しばらくぼんやりとしている状態が続きますが大きな問題はありません。但し1時間以上の場合は後遺症等考えて受診してください。 6 熱性けいれん後、四肢が"まひ"したように動かなくなることがあっても多くは一過性です。 7 ぜんそく薬(テオフィリン)や鼻水・かゆみなどの薬(抗ヒスタミン薬)でけいれんを起こしたりけいれんが遷延すことがあります。
視線→呼びかけ→つねる (目をみて呼びかけつねってみる、反応があやしい時は受診)
[参考]けいれん時の病院での対応
*けいれんが5分程度でおさまって意識があれば家庭内で様子をみることが可能
[参考] 痙攣が続いて止まらないとき(痙攣重積の治療)病院での対応
[参考] けいれん時の家庭内での対応と幼児のダイアップ(DZP)坐薬の使用方法
*解熱剤を同時に使用する場合は30分程度間隔をずらすこと。
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チェックポイント こどものおう吐はウイルス感染などの感染症や食事関連(食べすぎ・食べ合わせなど)によることが大部分ですが、時に外科的 処置を必要とする疾患や重篤な疾患が原因となっていることがあります。次の項目を確認して、外科的疾患や重症疾患に該当 する時は受診して下さい。該当していない場合は家庭内での対応が可能です。
1 吐いたものの性状、おう吐の特徴と程度(回数と量)をしらべる。 2 全身状態(発熱、顔色、元気等)、意識の程度、体重の減少等把握する。 3 腹部の状態(おなかがはっている、おなかがへこんでいる、てかてかしている、ふくらみがいびつ等)に注意する。 4 排便の有無、便の性状(かたちと色等)を確認する。
*注 嘔吐している時、顔色は蒼白です。びっくりしないで下さい。 嘔吐の内容は初め胃の内容物、次に胃液、ひどくなると黄色の液(十二指腸液)、黒ずんだかもしくは赤っぽい胃液(粘膜よりにじんだ血液の混入) になります。吐血では真っ赤な血液が大量に出ます、おとなでは潰瘍等の出血でよくみられますが、こどもではほとんどみられません。 緊急を要する外科的疾患の頻度は少なく、頑固な場合の多くはウイルスが原因です。あわてて夜間に受診する必要はありません。 上記チェック項目 1~4 は外科疾患の可能性・脱水の把握のための目安になります。
アドバイス
外科的疾患や重症感染症、重症脱水症が否定できれば通常の外来や家庭での対応になります。
1 外科的処置が必要なおう吐の特徴 a 生後1ヶ月前後で噴水様の勢いのあるおう吐、吐いた後はケロッとしてまた飲みたがる--------幽門狭窄 b 5分前後の間隔でおなかを痛がって泣くことを繰り返し、便を確認すると苺ジャム様の血便になっている------腸重積症 c 吐いた胃液がコ-ヒ-様(黒ずんでいる)か血液様を呈している。--------胃炎・胃潰瘍、粘膜のびらん d 吐いたものに糞臭がありおなかがはってふくれている。-----------------------腸閉塞 e 陰嚢がはれていて強くいたがり顔色が蒼白になっている。---------------------------------ヘルニアの陥頓 f 腹部が左右非対称に脹れている。-----------------------------------------------卵巣腫瘍、腎腫瘍等 g 右下腹部を痛がり歩く時にかばうにうにまえかがみになる。---------------------------急性虫垂炎、時に憩室炎
*上記に該当する場合は時間外でも受診が必要です。
2 重症脱水症(点滴や入院治療が必要な状態)
a 尿の回数と量が極端に少なくなり、口腔内が乾いて皮膚のはりがなく、いつものように元気に遊ぶことがなくなりぐったりしした状態。 . b 体重が普段と比べて5~10%以上減少している。
3 ウイルス性胃腸炎
顔色が蒼くおう吐・腹痛をくりかえす。下痢がひどくトイレから出られない。オムツからはみ出るような多量の水様下痢が続く。 病初期には1~2日の発熱を伴うことが普通。嘔吐は1~2日でおさまりますが下痢は長引くことが多く10日から2週間に及ぶこともあ ります。 -------ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなど
プラクティス小児外科的疾患の可能性がなく脱水の程度が軽い情況では次のように対応してください。
メモ 1 アクアライト、OS-1は薬局等で市販されています。 2 ポカリ等スポ-ツドリンクは糖分が多く、塩分が少ないため多量に与えると、不向きになることがあります。 3 こどもの顔色が蒼白にみえる間は吐く可能性が高く、ナウゼリン坐薬等があると役立ちます。 4 飲んでくれるからといって量を加減しないと吐いてしまうことが少なくありません。 5 外科的処置を必要とするおう吐は思っている以上に多くありません。 6 頑固な咳や精神的要因がおう吐の原因のこともあります。この場合、慢性の経過をとります。
嘔吐の特殊な型(周期性嘔吐症、腹部片頭痛) . . |
チェックポイント 下痢をしている時は脱水の程度が重要です。脱水の程度によって外来で点滴さらには入院、あるいは家庭内で水分の補給や 食事等の対応で治療可能かどうか決めることができます。
1 体重減少の程度は脱水の重症度の目安になります。10%以上の減少は外来で点滴か入院が必要になります。 2 下痢便の性状で原因の推察が可能です。 3 下痢の程度(回数と量)と同時に尿量や尿の回数を把握することが脱水の重症度の診断に役立ちます。 4 脱水所見(皮膚のはり、口腔内の唾液の程度、大泉門の状態、尿の回数、活動性の低下等)を把握することが重要です。 5 下痢以外の症状(おう吐、腹痛、発熱、食欲)についても観察することが必要です。 *注 下痢は回数が多くても脱水がなければ、夜間に受診する必要はありません。
アドバイス
下痢では脱水の進行を防止することが大切です。脱水が進行すれば家庭内の対応では回復は難しくなります。
1 下痢止めは原則として乳幼児には使用しない。 2 下痢がひどい時は、腸管をやすませるために固形物等を控えた方が良いでしょう。 3 水分と電解質の補給につとめて下さい。 4 母乳は中止する必要はなく、そのまま続けます。下痢がひどく回数が多いときはミルクを薄めに調合しますが、普段どおりでもかまいません。 5 唾液が少なく口内が乾いた状態で、尿量が減少していたらすでに脱水が始まっています。受診して医師の指示を受けて下さい。
プラクティス
脱水が軽いとき(体重減少が5%位まで)は家庭内での対応で回復します。
嘔吐・下痢の時の食餌の進め方の例 小児内科小林論文より 急性胃腸炎(嘔吐・下痢)の食餌療法の基本的な考え方
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メモ 1 便の性状からある程度原因が推定できます。 a 水様で悪臭が少ない--------ウイルス感染(アデノ、ロタ、ノロ、エコ-ウイルス等) b 白色水様もしくはクリ-ム様----------ロタウイルス c 水様、粘液様ときに血液が混じる---------大腸菌、O157、サルモネラ等 d 血便に粘液混入、悪臭がある----------細菌感染(サルモネラ、キャンピロバクタ、赤痢菌等) e 水様で膿粘血便---------キャンピロバクタ
* ウイルスが原因の場合、水様で血液が混じることはほとんどありません。 サルモネラ・O157では初期に血液が混じらず水様下痢のことがあります。
2 アレルギ-性紫斑病は頑固な腹痛と血便をみとめます。 3 "海苔のつくだに様"の便をタ-ル便といい胃潰瘍や十二指腸潰瘍からの出血でみられます。 4 潰瘍性大腸炎、クロ-ン病でも粘血下痢便をくりかえします。この時は大腸内視鏡検査が必須になります。 5 ノロウイルス、ロタウイルスの胃腸炎は時に下痢腹痛が遷延して重症な脱水症を起すことがあります。
* 下痢について抗生物質や止痢剤の使用に関しては、不都合なことや考慮すべきことがあげられており、病初期からの服用は必要ないと 考えています(下記参照)。
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腹痛は日常よくみられる訴えのひとつですが、直ちに救急外来を受診しなければならないような重篤疾患は多くはあり ません。見逃してはならないのは外科的処置が必要な急性虫垂炎、腸重積症、ヘルニアの陥頓などです。 チェックポイント 痛がっているおなかの部位を確認することが大切です。腹痛箇所によっておおよその診断が推定できます。
1 おなかを出して痛がっているところを確認してください。 みぞおち→胃に関係 右下腹部→虫垂炎等 左下腹部→便秘等 へその周辺→腸の機能異常等 2 随伴している症状(おう吐、下痢等)を把握するように努めてください。 3 歩行時右下腹部に痛みがあれば虫垂炎を考えて検査が必要です。 4 時間をおていて繰り返す腹痛(痛がって泣く)に血便をみとめたら、腸重積症が考えられます。 5 腹痛時には必ず鼠けいヘルニアの有無を確認する必要があります。
アドバイス
小児の腹痛の大部分が緊急性は少なく反復性腹痛(機能性)、感染性胃腸炎、食事の過誤(食べすぎ、食べ合わせ)、便秘などです。夜間すぐに受診する必要はありません。
1 こどもの虫垂炎は穿孔しやすいので、歩行時腰をかがめて右下腹部をいたがっている場合はすぐに受診すること。 2 ヘルニアがある場合、陥頓症状(ヘルニアが出っ放し状態になって強く痛がり顔色が悪くおう吐を伴う)があったらすぐに受診。 3 2才前後でおなかをいたがり間欠的に泣くことを繰り返すとき,腸重積の可能性があるので必ず受診する。 4 それまでは何事もなく突然強く痛がるものの、見た目には元気さがあるようなときは便秘がもっとも考えられます。
*注 1~3 はためらわず直ぐに受診してください。4 は家庭で浣腸を試みると"うそ"のように改善する可能性があります。 *注 ヘルニアの陥頓・腸重積は当外来ではほとんどみることがなく、病院に勤務していた時も数年に1回程度の頻度でした。
プラクティス
直ちに受診が必要な状況はアドバイス1-3に該当する時です。このことを念頭において腹痛に対応してください。
メモ .1 便秘や腸の機能的な異常でへその周囲を痛がる場合を反復性腹痛といい、この場合重篤な疾患はありません。 2 アレルギ-性紫斑病、潰瘍性大腸炎、クロ-ン病等は頑固な腹痛と血便をみとめます。 3 下肢に紫斑があり腹痛を訴えている場合はアレルギ-性紫斑病のことが多く、入院を必要とすることが少なくありません。 4 腎盂炎や発熱だけでも腹痛を訴えることがあります。 5 毎朝のように腹痛を訴えるときは、起立性調節障害 (自律神経失調症に近い)によることが多く、生活習慣の調整等で改善してゆきます。
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呼吸が速い、肩で息をしている、胸や頸部が呼吸をするたびにへこむ、苦しくて横になれない、咳が続いて止まらないなどが 呼吸困難の徴候です。
チェックポイント 緊急性が高い疾患は仮性クル-プ、細気管支炎、気管支喘息、気管支異物、重症な肺炎などです。これらの鑑別は難しいですが次のチェックポイント ならびにアドバイスを参考にするとある程度推測がつき、すぐに受診すべきかどうか判断することができます。
1 ぜいぜい、ヒュ-ヒュ-には2種類あります。息をはくとき(呼気性呼吸困難)もしくは息を吸うとき(吸気性呼吸困難)のどちらにぜいぜいヒュ-ヒュ- があるのか区別できると診断に役立ちます。 2 呼吸困難がある時、会話ができるか、食事をとることが可能か、よく眠れているか、顔色・唇が蒼いかどうかが重症度の目安になります。 3 会話が可能で食事も睡眠も普段とかわりなく、顔色も普通であればあわてて緊急に受診する必要性はありません。 4 息苦しくて話すことができず口唇が蒼いとき、呼吸のたびに肋間もしくは頸部(鎖骨の上部)が凹む(陥没呼吸)時は直ちに受診して下さい。
*注 呼吸困難の重症度の把握は直ちに受診するかどうかの根拠になるため、落ち着いて判断してください。
アドバイス
小児の呼吸困難で注意すべき疾患の特徴は次のようになります。
プラクティス
直ちに受診が必要な時はチェックポイント2・4に該当するときもしくは異物が排出されないときです。 とまらない咳やぜいぜい・ヒュ-ヒュ-などの呼吸困難には以下のように対応して下さい。
メモ 1 喘息の管理は大変進歩しているので、早期に受診し喘息治療のガイドラインに沿った指導を受けることが大切です。 2 ステロイドの吸入薬、ロイコトリエン拮抗薬などは長期管理に有効なので重症度に応じて処方を受けることが重要。 3 喘息の上手な管理で入院、夜間外来の受診を減らすことが可能です。 4 腎盂炎や発熱等でも呼吸困難(呼吸速迫)を時に訴えることがあります。 5 咳の種類である程度疾患が推察できます。
6 発作性の咳はときとして止まることなく連発して大変ですが診断が確定できれば治療が可能です。
(長引く咳の分類と考え方)
(考えられる疾疾患) 日常、小児科外来で良くみとめる咳は赤字で記載。
(考えられる疾患) 下記の表を参考に症状から疾患の推定が可能です。 喘鳴の吸気性、呼気性の判断は慣れるとすぐわかります。 呼吸音の異常(ラ音等)は聴診器で聞き分けて診断の手掛かりにしています。
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こどもの救急(日本小児科学会編)→参考になります。