いわゆる"かぜ"は下記のごとく様々に呼ばれています。
"風邪" "感冒" "鼻かぜ" "夏かぜ" "流行性感冒" 等です。かぜという診断は医学的にもあいまいな概念を含んでいる疾患単位で現時点では異なっ
た病因による上気道症状(発熱、咽頭痛、鼻水、咳・・・・)をさしています。病因が単一でないこと、症状の範囲が漠然としていることもあっ
て"かぜ症候群"とも呼ばれていますが、その内容は鼻炎、上気道炎、咽頭炎などです。原因があきらかであれば溶連菌感染症、RS感染症、マイ
コプラズマ感染症等原因ウイルスもしくは原因菌の名前を付して診断される方向にあります。
【参考】かぜの考え方(かぜ診療マニュアル 日本医事新報社、2019より引用)
ウイルス感染によるものが大部分ですが、細菌、マイコプラズマ、クラミジア等も原因となります。
1 ウイルス
1)ライノウイルス・・・113型以上(30~50%)
2)コロナウイルス・・・3型以上(10~15%)
3)エンテロウイルス・・・60型以上
4)パラインフルエンザウイルス・・・4型
5)RSウイルス,hMPV(ヒトメタニュ-モウイルス)
6)インフルエンザウイルス(A,B,新型)
7)レオウイルス
8)ロタウイルス・・・・・6型
9)アデノウイルス・・・・・51型
10)ヘルペスウイルス
2 マイコプラズマ
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3 クラミジア
4 リケッチア
5 細菌
1)溶連菌A群、B群
2)肺炎球菌
3)黄色ブドウ球菌
4)インフルエンザ菌
5)クレブシェラ
6)ナイセリア
6 真菌
***( )内の数字はウイルスによる感冒の頻度原因不明のウイルスも20~30%ある(内科学,西村書店)
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臨床病型とおもな病因ウイルス
1 普通のかぜ(発熱、のどいた、咳、鼻水)
ライノ・コロナ・アデノ・コクサッキ-・エコ-・RS・ヒトメタニュ-モ・インフルエンザ・パラインフルエンザウイルスなど
2 インフルエンザおよびインフルエンザ様疾患(高熱、頭痛、咽頭痛、筋肉痛、倦怠感)
インフルエンザ・パラインフルエンザ・アデノ・コクサッキ-・エコ-ウイルスなど
3 咽頭炎(のどいた、発熱)
アデノ・インフルエンザ・コクサッキ-・EB・単純ヘルペスウイルスなど
4 クル-プ(発熱、嗄れ声、犬吠様咳、吸気性呼吸困難)
パラインフルエンザ・インフルエンザ・エコ-・RSウイルスなど
5 気管支炎および細気管支炎(発熱、喘鳴、呼吸困難、胸痛)
RS・ヒトメタニュ-モ・パラインフルエンザ・インフルエンザ・麻疹・アデノウイルスなど
6 肺炎(発熱、咳、痰、胸痛、呼吸困難)
インフルエンザ・パラインフルエンザ・RS・麻疹・アデノ・サイトメガロ、水痘ウイルス
EBウイルス・ヒトメタニュ-モウイルス など
夏かぜ・冬のかぜの原因ウイルスについて、確率の高いものを示します。夏かぜとして圧倒的に多いのは
コクサッキ-ウイルスを含むエンテロウイルスです。水疱・発疹をとるものから、高熱だけが特徴のもの、下
痢が目立つもの種々みとめられます。病因と症状をが理解できてくると"かぜ"と診断されるのになにか違
和感を感じてしまいます。
注
*パラインフルエンザ--成人は軽い上気道炎、嗄声が特徴。小児では2~5日の熱、3型感染は低年齢で
は細気管支炎・肺炎のことも、1・2型ではクル-プが起きやすい。
*コロナウイルス---軽症の上気道症状(発熱・鼻水・咽頭痛等)、時に肺炎・細気管支炎の報告。
*メタニュ-モウイルス---比較的新しいウイルス、肺炎・気管支炎等の原因になることも。2001年にこども
の呼吸器感染症の患者から初めて分離、小児呼吸器感染症の5~10%に検出されるとの報告あり。症状はRS
ウイルス感染症に似ていて、3~5月に多くRSウイルス検査が陰性の時に考慮。
*レオウイルス---胃腸疾患や軽い上気道炎症状。
かぜ症候群抗菌薬の使用の目安
① 高熱の持続(3日間以上) ②膿性の喀痰、鼻汁 ③扁桃腫大と膿栓、白苔付着 ④中耳炎、副鼻腔炎の合併
⑤ 強い炎症反応(白血球増多、CRP陽性) ⑥ハイリスクの患者
*幼小児ではかぜに年5~8回罹患、多い乳幼児では15回前後罹ります。
*成人では1~2回程度の罹患になります。
*乳幼児では毎週のように罹ることも不思議ではありません。
こどもは免疫(獲得)が十分でないため、いつもかぜにかかっています。それが普通です。
かぜの原因ウイルス、細菌はざっと300以上あります。
したがってそれだけの回数かぜにかかることになります。
ある時期(1~2・3歳)、毎週かかっても不思議ではありません。
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赤ちゃんは生後10ヶ月前後まで母親から臍帯を経由して供給された免疫力(受動免疫)に守られて、ウイルスや細菌に感染しないように仕組まれています(誕生するまでは胎内という無菌室に入っている)。したがってこの時期まではよほどでないと発熱しません。10ヶ月前後をすぎると母親からもらった免疫抗体が枯渇し、途端に感染しやすい状態になります。感染は免疫抗体があれば防ぐことができるのですが、生後10ヶ月を過ぎた頃からは自分で免疫抗体をつくらなければなりません。
ヒトの体はウイルスや細菌に感染しないと抗体ができません。10ヶ月前後から5才くらいまでに感染する病原体はおよそ300くらいあります。これらに順次感染してひとつひとつ免疫抗体を獲得してゆくことになります。ある時は発熱、ある時は咳、ある時は下痢等次々にかかってゆきます。ほぼ毎週なにかしらに感染していることになります。そうしてほぼ300の感染症に罹患し成人と同じ程度の免疫が成立すると、それからはおとなと同様年に2~3回程度の発熱ですむことになります。元気に学校生活を送る準備が整ったことになるわけです。
こどもに「熱をだしてもらいたくない」これは家族にとってあたりまえの願いです。しかし、免疫の仕組みを考えればむしろ感染症にかかって早く免疫を獲得した方が社会生活する上で得策です。麻疹や結核などかかると大変ですから、その場合は予防接種によって人為的に免疫をつくる方法がとられます。無菌室に入って過ごせば発熱したり咳をしたりの"かぜ"には罹りませんが、一生無菌室で過ごすことはできません(受精卵が胎児へと成長する母親の胎内は無菌環境下)。無菌室を出た瞬間からたくさんの感染症にみまわれ、学校や会社等に通えない等の社会生活に支障を来す状況になってしまいます。日常のウイルスや細菌などによる感染をむやみに怖がらず、医師等の助言のもと、病気をうまく克服してゆくことが大切と考えています。
いたずらに守っては強い免疫力をもった"からだ"を獲得できません。
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