乳児健診(1歳半)

                                                  

 

                                                                                                                                                                                                                     (太田市保健センタ-)

[低身長]標準値平均-2SD(or3パ-センタイル)以下を低身長とする。

[高身長]標準値平均+2SD(or97パ-セセンタイル)以上を高身長とする。

目標身長     父親の身長+母親の身長+13 ×1/2 (男) ・  父親の身長+母親の身長-13 ×1/2 (女)    (男) target range  :± 9cm (女) ±8cm 

                                                                             

* SGA性低身長 SGA児で出生した児のうち身長が2歳までに-2SDをこえてキャッチアップしない児→GH療法

[肥満]肥満度30%以上(肥満曲線からもとめるのが簡単)を肥満とする。

[やせ]肥満度20%以下(肥満曲線からもとめるのが簡単)をやせとする。

1 +30%以上 ふとりすぎ
2 +20%~+30% ややふとりすぎ
3 +15%~+20% ふとりぎみ
4 -15%~+15% ふつう
5 -20%~-15% やせ
6 -20%以下 やせすぎ

・肥満曲線   (男児)   ・肥満曲線   (女児) 

 

[小奇形等の診察]以前は変質徴候と呼んでいたが現在は小奇形としてとらえている。(参考書、形態異常のみかた 小児内科 42(8),2010)

[頭部]

  • 大頭症---水頭症、骨形成不全症、軟骨異栄養症、Morquio病など
  • 小頭症---家族性小頭症、胎内感染(TORCHなど)、胎児アルコ-ル症候群など
  • 内眼角贅皮---ダウン症、正常新生児でもみられるが2~3ヶ月で消失。
  • 巨舌---先天性甲状腺機能低下症、ダウン症、糖原病、Beckwith-Wiedemann症候群(低血糖・肝腫大・耳介奇形など)など
  • 翼状頸---タ-ナ-症候群、ヌーナン症候群などでみられる。
  • 耳前瘻孔、耳瘻孔、耳輪後部の陥凹---無処置 副耳---美容的な観点から必要であれば切除。

[口腔]

  • 舌小帯短縮症→2歳以降短縮(強靭で策状の小帯)が残る場合は手術適応。出生直後・新生児期の切除は瘢痕・運動制限を考慮して実施しない。
  • 上唇小帯→乳歯が生えそろった段階、2歳半以降で上唇小帯が肥厚し左右の切歯間にすきまがある時は手術適応。

[眼]

  • 鼻涙管閉塞→涙嚢ブマッサ-ジ、不可なら涙嚢洗浄、涙道ブジ-。
  • 睫毛内反→1歳までは自然消失を待つ、1歳以降改善していない場合は眼科へ。
  • 眼球突出→先天性緑内障等重大疾患の可能性があり、直ちに眼科へ。
  • 斜視→角膜反射法(眼前50cmからペンライト、反射のズレをみる)、乳児内斜視は手術、調節性内斜視は2重焦点眼鏡の装着、間欠性外斜視は5歳まで経過観察、改善ない時手術。

[皮膚]

  • 単純性血管腫(ポートワイン母斑)→自然消退しないのでレ-ザ-治療。前額中央・鼻唇溝・眼瞼内側のものはサモンパッチ、項部のものはウンナ母斑。
  • 乳児血管腫(イチゴ状血管腫)→自然消退するものは経過観察のみ。発生部位(感覚器官)や醜状を残す恐れがある場合、ヘマジオルシロップ適応(1歳未満)。
  • 異所性蒙古斑→10歳まで経過観察(3~4%残存)、消えない場合レ-ザ-治療。
  • 色素細胞母斑(黒色母斑、神経皮膚黒色種)→外科的治療。
  • 足底の色素性母斑→悪性黒色腫の可能性は少ないが7mm以上は切除考慮。
  • 太田母斑(青紫色から淡褐色の小色素斑、眼強膜に青色色素斑があれば確実)→小児期にレ-ザ-治療、乳児期の早期治療が効果的。
  • 扁平母斑→消退しない、多数ある場合(6個以上)は神経線維種が疑わしい。遅れて発生多毛を伴うものは遅発性扁平母斑、レ-ザ-治療するが再発率が高い。
  • カフェオレ斑→扁平で平らな長円形の褐色斑、1.5cm以上のものが6個以上(6 spots criterion)あれば神経線維腫症の可能性、思春期を過ぎると全身に神経
  • 線維種が多発してみられてくる。中枢神経症状、骨症状を合併した重症型は医療補助の対象になる。
  • 脂腺母斑→被髪頭部に後発する黄色調の不規則な隆起病変思春期に隆起、頭部のものは脱毛している。2~3cm以下なら切除可能なので大きくなる前に手術。
  • 表皮母斑→こめかみから前頭部にかけて褐色のザラザラした疣状の丘疹、発展して線状の配列を呈する。良性だが消失することはない。
  • 正中部母斑(サモンパッチ)→機能性の血管拡張、自然消退(1歳半で80%6歳で95%)するが項部のもの(ウンナ母斑)は自然消失が少なく50~100%残る。
  • サモンパッチ中央(鼻唇溝)にあるものはほぼ100%3歳までに消退する。
  • 毛細血管性血管腫→乳幼児の顔面に出現、血の固まりのような血管腫出血しやすく液体窒素スプレ-もしくはアルギン酸カルシウムの創傷被覆材。
  • 脱色性母斑→出生時からみられる白色調の病変、メラノサイトの機能異常。治療法はない。葉状白斑は幼児期に出現自然に消失する葉っぱ状の白斑、5mm
  • 以上のものが3個以上ある時は結節性硬化症を疑う。
  • アトピ-性皮膚炎は1~2ヶ月から2歳までに発症する例が大部分(約80%),初期は乳児脂漏性皮膚炎と鑑別が難しい、慢性反復性が特徴。
  • アトピ-性皮膚炎と乾癬(乳児では少ない)を誤診しないこと。 

[整形外科]

  • 先天性股関節脱臼→開排制限(左右対称は生理的、クリックテストは3~4か月迄)、大腿部のシワの左右差、脚長差などから疑う。リーメンは生後2~5か月から、1歳以降は半数は手術。

  • O脚・X脚→2歳まではO脚、その後X脚に転じ6・7歳で改善、生理的O・X脚はほぼ左右対称。病的な場合(Blount病、軟骨無形成、くる病など)は低身長等に注意。O・X脚の程度に左右差がある場合、進行性の場合、低身長などの骨疾患を疑わせる所見がある場合は整形外科へ。病的O脚は5~6%。

  • うちわ歩行→足部の内転変形、下腿内捻で自然回復がない場合整形外科へ、5~8歳で手術装具の効果は限定的。
  • curly toe(巻きゆび)、overlapping toe(重なり趾)は無治療。内反小趾は靴に接触して痛みを伴うようになる時、手術を考慮。
  • 外販偏平足は生理的で自然に改善、垂直距骨は矯正ギブス治療が行われるようになり、早期に専門医へ
  • 踵足は経過を観察、一過性のものか麻痺性かの見極めが必要、麻痺性は障害装具か手術療法。
  • つま先歩行→正常のことが多いが、発達障害児に確率が高いので要注意、発達障害児にみられるものは、多くは間歇的で一過性、歩行するときだけつま先だちになることが多い。
  • 自閉症・言語コミュニケーション障害・精神遅滞・学習障害などを疑う。

[泌尿器科]

  • 陰嚢水瘤・精索水瘤→3~4歳で治癒傾向なければ手術。鼠径ヘルニアとの鑑別(腫大の境界が明確かどうか)に注意、穿刺は数日後に再発、すべきではない。
  • 停留精巣→不妊の可能性、片側25-38%両側67-77%、精巣腫瘍の発生確率1-2%。治療は6ヶ月~2歳で手術する。
  • 移動精巣→軽症は経過観察。1)精巣が陰嚢底部に下りないもの 2)精巣が小さいもの 3)暖まったときだけ陰嚢上部におりるものは5・6歳までに手術。
  • 包茎→真正包茎は1)排尿異常 2)亀頭包皮炎を繰り返す 3)嵌頓包茎は手術適応、保存的には毎日ロコイド軟膏の内側塗布と翻転、2週間程度で効果。包皮口が5mm以上なら自然治癒可能。
  • 矮小陰茎(ミクロペニス)→2cm以下(1歳で平均3.4cm±0.5cm)は泌尿器へ。

[胸部]

  • 漏斗胸→0.2~0.7%で男児に多い、3歳以降に陥凹が改善することはまれ。鳩胸は漏斗胸より頻度が少ない(約20%)、いずれも美容上から手術が考慮される。
  • ハリソン溝→横隔膜付着部の水平に走る胸郭の陥凹、くる病でみられるが疾患がなくてもハリソン溝様の胸郭の下方が反っていることがあり病的な意味はない
  • 無害性心雑音の見分け方 

[腹部]

  • 臍ヘルニア→多くの場合1歳ころまでに自然治癒、1~2歳を超えても残っている場合、余剰皮膚が飛び出している場合(臍突出症)には手術。
  • 臍圧迫療法→開始時期は2ヶ月前後、6ヶ月を過ぎると効果が出にくい。1歳になっても腫れる場合は手術適応。 
  • 鼠径ヘルニアは診断したら外科に紹介。
[爪]
  • 足の爪の匙状の変形→歩きはじめで指腹に圧力が加わるようになると、爪甲が反ったように変形していることがあります。成長につれて爪が強靭になれば正常な爪になりますが、貧血時にもみられることがあり顔貌眼瞼結膜等から貧血の検査が必要か判断をする。
  • 爪の縦状の色素沈着(黒~茶色)→生後よりみられる爪甲帯状色素沈着症でいずれ消失するため経過観察でよい。思春期以降ではメラノ-マのことがあり紹介する。  

[ことばの遅れへの対応]

  • 1歳6ヶ月で単語がなければ経過観察して、2歳になっても単語がなければ専門医へ。

[上記に該当しないことばの遅れ] 下記ができていれば問題はない。

  1. 周りからの話しかけがよくわかっている。
  2. ことばでの指示ができる。(言語理解可能)
  3. 音が聞こえている。
  4. おとなと一緒に楽しく遊べる。(対人関係)

[発達障害を疑う問題症状問題行動]

  1. 愛着行動の異常(attachment)   人見知りをしない。ひとりでも平気でいられる。または母親にべったりで父親になつかない。
  2. 多動
  3. 言葉の遅れ
  4. 極端に慣れない場面が苦手
  5. 感覚異常、極端な偏食

[診察時、発達障害を疑う行動]

  1. 用意した興味をひくおもちゃ等への視線、他に注意が向かないときは問題がある。
  2. こどもと視線があいづらい。(0~18月)
  3. ひととの交流の中で笑いが少ない。(2~10月)
  4. 筋ト-ヌスの低下。(4ヶ月)
  5. 愛着行動の未分化。(7~18ヶ月)
  6. 指差しした方向見るなどの応答型共同注視の遅れ。(10~18ヶ月)

[10ヶ月健診の運動発達と知的発達の見方]

  1. 運動発達ははいはい・つかまり立ち・つたい歩き・物のつまみ方でみる。ハイハイをしなくてもずりはいで移動、側方パラシュ-ト反応があれば心配いらない。
  2. 知的発達は模倣後追いで評価する。視線があわず笑いや人見知りが少ない時は発達障害・精神遅滞をうがって専門施設に紹介する。

[1歳半健診運動発達と知的発達]

  1. 歩行(high ,middle,low gurd)をみる。歩けないもしくはハイガ-トはあきらかに異常かおくれている。脳性麻痺・AD/HD・筋ジスなどを疑い精密検査へ。
  2. 応答の指差し、ごっこ遊び(人形にごはんをあげるなど)で評価。
  3. 全く単語が出ていない場合は「言葉の遅れ」と考える。2歳までには精神遅滞・発達障害・難聴など考慮して紹介する。

[脳機能障害]

  1. 脳性麻痺:運動機能障害を有する。
  2. 精神遅滞:知的な障害を有する。
  3. てんかん:けいれん発作を有する。
  4. 発達障害:社会性・情緒・行動障害を有する。

[発達障害の概要]

                                                                                                                                                          (    訂正 stastical→Statistical  )

[自閉症診断の手がかり]

[1歳半健診でみられやすい異常所見と疑われる疾患]

  1. 歩かない→脳性麻痺、精神遅滞、ミオパチ-、シャフラ-、正常バリエ-ションなど
  2. 歩き方がおかしい、ころびやすい→軽度脳性麻痺、整形外科的異常など)
  3. 言葉がおそい、意味のある単語を言わない→精神遅滞、難聴など
  4. 音に対する反応が鈍い、読んでも返事をしない→精神遅滞、難聴など
  5. なんとなく反応が鈍い→軽度精神遅滞、軽度難聴
  6. つかみ方がおかしい→軽度脳性麻痺など  (乳幼児健診の神経学的チェック法:南山堂、2007より引用)
  7. つま先歩行をしている場合→自閉性障害(62.9%)、言語コミニュケ-ション障害(42%)、精神遅滞(35.8%)、学習障害(20.0%)(乳幼児の発達障害マニュアル:医学書院,2013)
  8. つま先歩行→発達障害でみられる時は、多くは間歇的的で一過性

[発達障害児の特徴的行動]

  1. 自己刺激行動・感覚遊び→身体を揺する、頭を壁に打ちつける、手を噛むなど
  2. つま先歩行
  3. シャッフリング
  4. 感覚過敏と感覚鈍麻→鳴き声が苦手、砂に触れない、あるものに異常に怖がるなど。また冬でも半そで、熱い風呂も平気などの感覚鈍麻
  5. 極端な偏食・異食→白いご飯しか食べない、紙など食べてしまう
  6. 感情の変動→急に笑ったり怒ったり、感情がすぐ行動になってしまう
  7. こだわり→決まったタオルをもっていないと気が済まないなど
  8. 四つん這いをしない→座位の時期からすぐに立位になる
  9. 一度出ていた言葉を全くしゃべらなくなる
  10. クレ-ン現象→相手の手をとって欲しいもののところにもってゆく
  11. 手掌を自分に向けてバイバイする→部分模倣、全体の意味がわかっていない
  12. ワンパタ-ンなごっこ遊び
  13. 多弁→よくしゃべってさまざまな単語が出るが会話にならない
  14. 人にべたべたくっつく
  15. マイペ-ス
  16. 集団に入れない

[乳幼児虐待] ①身体的虐待 ②ネグレクト(餓死・熱中症・凍死・感染症・傷病の悪化など) ③心理的虐待(暴言・拒絶など) ④性的虐待 ⑤捨子・置き去り ⑥登行禁止・閉じ込め

[虐待が疑われる症状・所見]

こどもの身体面

  1. 多数の新旧(青あざ・皮下出血)の外傷・熱傷(瘢痕)
  2. 反復する外傷や中毒性事故(薬剤等)
  3. 多発骨折(肋骨骨折・自然外傷では起こりにくい骨折・corner fractureなど)
  4. 原因不明の硬膜下血腫や眼底出血(揺さぶられ症候群shaken baby syndromeなど)
  5. 原因不明の低身長、発育不全などの成長障害(physical neglect)
  6. 原因不明の腹部臓器損傷
  7. 股に何かはさまったような変な歩き方(性的虐待)
  8. 入所後入院等離れていると新しい外傷ができない
  9. 保護者の言い分と臨床症状が合わない

こどもの行動面

  1. 持続する過食や食行動の異常
  2. 激しい攻撃性
  3. 痛覚刺激に鈍感または無反応
  4. はたらきかけに反応が少なく、表面的一方的な対人関係
  5. 家族からの隔離に無反応動揺がみられない
  6. 保護者に対する恐怖や回避する行動がみられる
  7. 反復する単独での非行行為

保護者について

  1. 外傷があるのに受診や相談が無いかその時期が遅い
  2. 重症なのに深刻さが感じられないことがある
  3. 状況説明に一貫性がなく、平然とウソをつく
  4. 情報提供に躊躇や抵抗がある
  5. Dr.shopping、ミュンヒハウゼン症候群、non-accidental poisoning

虐待しやすい親の条件

  1. 虐待された経験がある
  2. 精神疾患や知的障害がありこどもへの感情移入が難しい
  3. 過大な育児負担、経済的困窮、夫婦不和などの生活上のストレス
  4. 社会的に孤立している
  5. 親にとってそのこどもが気に入らず育てにくく感じている

[初期対応]

  1. 幼稚園や保育園等単独での対応は不可能
  2. 虐待を疑ったら直ちに児童相談所や保健所保健センタ-に相談する
  3. 外傷等、医療を必要とする時は受診させる
  4. 事件性がある場合は警察に連絡
  5. 児童相談所を中心に公的な援助ネットワ-クが絶対的に必要

[重症心身障害児]

  •  重度の肢体不自由と重度の知的障害を合併した状態、仮死など周産期の要因・脳炎後遺症など出生後の要因・染色体異常など酒精前の疾患に起因するものなど原因は多様。
  •  重症心身障害児の姿勢と重症心身障害児にみられるおもな合併症。

[予防接種歴の確認]
  • 1歳半まで日脳・MR2期・DTⅡ期をのぞく定期予報接種(B型肝炎・ヒブ・プレベナ-・四種混合・BCG・MRⅠ期)が終了していることが望ましい。

                                       (予防接種ガイドライン 2018より改変引用)

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